福岡出身のミゾベリョウ(Vo./Gt.)、森山公稀(Pf./Syn.)が中心となり、2014年に「odol(オドル)」を結成。その年の7月に「FUJI ROCK FESTIVAL'14 ROOKIE A GO-GO」へ出演するなど音楽ファンからの評価も高く、ジャンルを意識せず、自由にアレンジされる楽曲には独自の先進性とポピュラリティが混在し、新しい楽曲をリリースする度にodolらしさを更新している。昨年2019年には、FLOWER FLOWERのyuiさんと歌唱したマッシュアップ【「ばらの花」×「ネイティブダンサー」】で話題となるなど、ミゾベリョウ名義でも活動の幅を広げている同氏の素顔に迫った。
音楽に触れたきっかけを教えてください。
小学生の頃にMDをいじっていたら、Mr.Children(以下:ミスチル)の「Sign」って曲が流れてきて。「いい曲すぎる。」ってなって。それがきっかけで音楽が好きになりました。6年生の時に学芸会があって、体育得意な子は跳び箱飛んだり、ダンス上手な子は踊ったりする学芸会だったんですけど、なぜか最後に「お前歌えるやろ」みたいな感じで、合唱曲の一番を独りで歌うことになって。今思えばそれが原体験的なものだったのかもしれません。そして、高校生になってから本格的に始めたって感じです。
実際に、本格的アーティストになろうと思ったきっかけはいつだったんですか?
大学生になって音楽を続けていく中で、自分達の作った音楽が評価されだして。僕達の音楽を聴いて、良いって思ってくれて、実際にライブに来てくれた人達の顔とかを見るようになって、「これで生きていくぞ」っていう気持ちが芽生えました。
音楽を続けていこうって思ったきっかけはフジロックの影響がが大きかったんですか?
フジロックフェスティバル(以下:フジロック)の「ROOKIE A GO-GO」っていう、新人が出る枠があるんですけど、それに決まったりしたときに、そこで、音楽で食べていけるかもしれないとは思ったんですけど、実は目に見えて状況が良くなったわけではなくて。ちゃんと言葉にして目指し始めたのは、3年前くらいですかね。大学を休学して、今のUK.PROJECTとHIP LAND MUSICの所属アーティストになって。味方になってくれる人が増えて、音楽で食べていくということをちゃんと言葉にするようになっていきました。
odolの結成について教えてください。
作曲をやっている、ピアノの森山公稀とは中学の頃からの知り合いで。高校に入って一緒にバンドをやっていました。僕は漠然と東京で音楽をやりたくて、彼に「一緒に行こう。東京で音楽をやろう。」って言ったら、「わかった。俺、東京藝大に行くわ。」って。僕が一年先に東京入りしていたので、その一年間で出会った一緒に音楽をやりたいって思った人達に声をかけて集めて、森山の上京を待って、2014年にやっと結成に至りました。
2014年の2月にファーストデモをリリースされて、同年の7月にフジロックに出てられますが、決まった時はどんな感じでしたか?
決まった時に実は僕、大学の図書館で寝てて。(笑)電話が来て知らされた時は、私語厳禁なところだったけど、よっしゃーって大声で叫びましたね。(笑)「ROOKIE A GO-GO」って登竜門的だったので、めちゃくちゃ嬉しかったです。
初めてのフェスのステージの感想ってどうでしたか?
現実を知らなさ過ぎたんですけど、三大フェスの新人枠に出た人はその後とんとん拍子で、ライブ終わった瞬間バッグヤードに関係者が駆けつけて「是非うちと契約してください!」みたいな勝手なイメージだったんですが、もちろんそんなことはなくて。(笑)そこのギャップに落胆してしまった気持ち、もう終わってしまったっていう気持ちの方が大きかったです。自分達とは比べ物にならないほどの人が集まっているメインステージのアーティストの演奏や、外国人アーティスト、他のルーキーのライブを観て落ち込んだ気持ちの方が大きかったです。
ミゾベさんは楽曲の作詞をされてますが、歌詞を書く上で拘っていることはありますか?
よく言う、「降ってくる」みたいなことは全くなくて。基本的に僕らは音楽が先にあって、後から歌詞をつけていきます。メロディを聴きながら、机に向かって、書こうと思って書いています。
「音楽ありきの歌詞」っていうのを一番大切にしています。例えば、曲のテンポや他の楽器の音色によって、同じ歌詞でも全く違う聞こえ方になってきます。悲しい響きのコードに「好きだよ」って言葉をのせたら、悲しい恋。楽しい音に「好きだよ」だったら、ハッピーな恋愛みたいな。森山が作ったデモの時点で、音楽的にはほとんど完成していることも多いので、入ってる音からインスピレーションをもらって歌詞を書いていきます。
ピアノやストリングスが結構耳に入ってくるところから、繊細な楽曲づくりを感じ取れるのですが、メンバーについて少し教えてください。
森山(Piano/ Synthesizer)は中学からの付き合い。井上拓哉(Guitar)は大学の同級生。Shaikh Sofian(bass)は井上と一緒にバンドやってたんですよ。垣守翔真(Drum)も元々違うバンドでプレイしていて、ネットから出会いました。最初は仕事として音楽をやることを全く意識していなくて、仲が良くてフィーリングが合う人間が自然に集まったみたいな。バンドをやっていく中で、音楽性はその時の興味や感じることで変わっていきますが、メンバーの間でいろいろなことを言葉にして共有しているうちに、気づいたら全員が同じ方向を向いていた、という関係ですかね。
yui(FLOWER FLOWER)さんとのコラボレーションが話題になったミゾベさんですが、他のアーティストさんとコラボをするってどうでしたか?
めちゃくちゃ勉強になりました。odolの場合は、僕はボーカリストでもあり、作詞担当でもあり、フロントマンでもあります。けれどコラボの場では、僕は、自分のバンドでの作詞やフロントマンという役割は関係ありません。yuiさんにとってコラボの相手が僕で本当にいいのかなって思ったりもして、大きなプレッシャーを感じつつ、ボーカリストとしての自分を成長させてくれた場になりました。
人に合わせて歌ってみる面白さはありましたか?
odolの楽曲と違うアプローチを求められることも多く、自分の可能性が一個広がったように思えました。
ミゾベさんが影響を受けたアーティストは?
やっぱり一番自分の中に根付いているのは、ミスチルなのかな。桜井さんぽく絶対に歌わないでおこうっていう逆の影響もありますが、日本語の歌詞をメロディーに乗せる力は、ミスチルがずば抜けているのでとても参考になりますし、今聞いてもずっと新しいなって思いますね。
最近だとradikoやUCCのCMだったり、「サヨナラまでの30分」っていう映画のタイアップだったり、今後もそういった依頼が増えていくと思うんですが、タイアップの反響はありますか?
今までは自分達から出てきたテーマを音楽で表現するってところに重きを置いて作っていたんですが、タイアップは依頼を受けて作っていくので、ゼロからイチにする作業が自分達にないってことがすごく大きな違いで。自分達で作る場合は、自分達の気持ちに素直になって掘り下げることが一番大切にしてきたけど、タイアップは他人の考えにちゃんと寄り添ったり、その商品やブランドのコンセプトに対して自分なりの答えを出すところに重きを置かないといけないので、ベクトルが違うんですよね。タイアップは、今までと違ったアプローチで曲を作れる面白さと、自分にないものが生まれていく感覚があって。それをきっかけにodolを知ってくれる人達もいるし、タイアップがあることで、自分の殻から脱せている感じもしていて、いい相乗効果を生んでいるように思えます。
2014年からアーティスト活動を続けてきて、今年で6年。スランプはありましたか?
スランプという言葉より重いかもしれないです。ボーカリストが作詞作曲して、みんな俺についてこい!っていうタイプのバンドが一番多いと思うんですけど、僕らは、作曲の森山がアレンジもするので、僕にはフロントマンとしての責任はあるけど、ボーカリストとしての自分ってなんなんだろうって思う時期もあって。二枚アルバムを出して、次EPを出す制作のタイミングでアルバムが思ったより評価されてなかったのもあって、大学4年生の就活のタイミングで、本当に音楽に人生を賭けられるのかなって。その時は、曲も書けず、ライブもできず、メンバー同士の会話も減ってしまったので、その時がスランプというか。
どうやって脱却したんですか?
結局、一年くらいかけて少しずつ整理していきました。ファーストアルバムは俺たちに気づいてくれって叫んでるもの、セカンドアルバムは福岡の故郷を歌ったもの。その次に、大学を卒業して、就職せずに音楽でやっていくとして、ファースト、セカンド以上のテーマで表現したいことがあるのかなって。僕は特別な生まれでもないし、自分の中に何か壮大なテーマがない中で、そんな自分が何かを表現していいのかなっていう疑問があって立ち止まってしまったんですけど、自分が思ったことはなんでも本当のことだから、シンプルに歌ってもいいんだなって一年かけてマインドを変えました。ただ進み続けて、走りながら考えるしかない、というか。
具体的には?
スランプを脱してから最初に出したのが、「視線」っていうEPなんですけど、それはとても当たり前のことなんだけど、ざっくりいうと自分が今見てるもの、向いてる方向こそが自分の世界だっていうテーマのもので。その次に「往来するもの」ってアルバムを出すんですけど、それは向いた方向に相手がいれば、相手から返ってくるものもあるっていう意味合いで。最近だした「WEFT」というEPは、横糸っていう意味で。タイアップっていうものは僕たち縦糸と出会った人たちという横糸で布を織りなすようなものだなってところから着想を得ました。
「視線」の前に、「GREEN」って楽曲を出されていますよね?
リード曲として出しています。タイトルの「GREEN」はメロディーが出来上がった段階でつけた仮タイトルから変わってないんです。この曲をフジロックの一番でっかいグリーンステージでやるんだっていう想いから名づけました。フジロックのグリーンステージって何万人もいて、世界中の色んな人種や性別年齢の人達が集まっていて。その全員が共感できる歌詞が作れたらって思うと同時に、本当の意味で万人が共感できる歌詞なんてないのかもって思ったり。全員が個々の人間で、人の気持ちになって考えることはできるけど、本当の意味で同じ気持ちになることはできないっていう事実は全員に共通するなと思って、そのテーマで書き上げたのがこの曲なんです。
深いですね。ちなみに未だにライブやフェスがコロナウイルスの影響で、延期や中止されてしまっていることに対してはどう思いますか?
自分の中では「作ること」と「演奏すること」どっちが大切かを考えた時に、自分にとって重いのは「作ること」だったんですよね。そっちはできるじゃないですか。それをどうやってみんなに届けるのか考えたその延長にあるものがライブやフェスなので。配信によってライブを届けることだってできるので、そこに対して、意外と悲観していなかったりもします。ただ、ライブという同じ空間を共有することでしか感じることのできない感動も絶対にあって。「届け方」に関してはずっと考えていくしかないなと思っています。
音楽以外の話をここで少し。ミゾベさん自身、「服」好きで有名ですが、ファッションや古着にはいつから興味が沸いたんですか?
古着を好きになったきっかけは、今思い返してみると、親の価値観に影響を受けたというか。今思うと、服を買うときにも、靴を買うときにも、「これのほうがいいんじゃない?」とよく口を出してくる親でした。子供の時は絶対その価値観をわからないんですけど、オーセンティックなもの・普通のものこそ一番かっこいいんだって感覚を植え付けられていたように思います。定期的に身の回りの革製品を磨いたり、というメンテナンスの大切さ、そうやって長く使っていけるものを自分の手元に置いておきたいという価値観も自然に教わってこれたのは良かったと思います。親元を離れて高円寺で一人暮らしをするようになって、古着カルチャーの根強い街の中に身を置いた時に、そういう定番のものがめちゃくちゃカッコいいなって思える自分が居て、答え合わせができるようになっていきました。
改めて、古着の魅力ってなんですか?
ヴィンテージって「敢えて選ぶもの」だと思います。ブランド力があるものかって言われたらそうじゃないし、人から見たら、「こんなのに何十万も出すの?」っていう世界だと思うんです。それでも、自分は「これが好きだ」と選び取っていく、態度を示すもの。
古着と音楽の共通項ってなんですか?
僕らの音楽も、古着を探すように、今は一生懸命掘って、見つけてくれた人が好きになってくれている。最近SNSで「人からダサいと思われない着こなし方」的なテーマが目に付くことがあって。それって価値観の判断を自分じゃなくて他人に預けていて、僕の感覚とは真逆だなと思って。例えば、本当にファッションが好きな人は、ダサいって思われたくないからアパレルで働くわけじゃないし、好きを極めたいからこそ、そこで働く選択をしたわけで。僕は大学を卒業して、周りが就職していくなか、音楽をやっていくと曲がりなりにも決めました。そういう人生の岐路のような大きな場面でも、今日聴く曲がなんなのかも、今日着る服がなんなのかも、「自分の意思で選び取っていく」という点では変わりません。そこがとてもシンクロしている、と最近強く思います。
最後に、ミゾベさんにとって35歳とは?
正直、今はまだ35歳の自分が想像がつかないんですが、26歳になってみてわかるのは、まだこの歳では成人だけどまだまだ子供というか。子供と大人の違いってなんだろうと考えたときに、僕は「他人のために生きられるか」だと思って。まだまだ今の僕は自分を大きくしないといけないと思います。けれど35歳になった時に、ある程度自分の人生がちゃんと可視化出来ていたり、周りの人達にもその先を見せられる時期でありたいなって思います。外見も、35歳になって、話しかけないとその人の人となりがわからないような人ではありたくない。外から見てもミゾベリョウってこんな人なんだなってわかるようにある程度完成しておきたい年齢です。
1. 小さなことをひとつ
※radikoブランドムービー・オリジナルソング
2. かたちのないもの
※UCC BLACK無糖「#この気持ちは無添加です」キャンペーンソング
3. 瞬間
※映画「サヨナラまでの30分」劇中バンド"ECHOLL"への提供曲セルフカバー
品番:UKCD-1191
レーベル:UK.PROJECT
Streaming / Download
https://odol.lnk.to/WEFT/
Photo,Design by HIDEAKI HAMADA
PROFILE
ミゾベリョウ
odol(Vocal/Guitar)
Instagram:https://www.instagram.com/ryo_mizobe/
note:https://note.com/odol_backyard/m/ma845483d8196/
odol
Official Site:https://odol.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/odol_jpn/
YouTube:https://www.youtube.com/c/odol_jpn/
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