かつて人気デザイナーやファッション業界の重鎮たちが、夜な夜な集まったといわれる原宿通り。とんちゃん通りという名前でも呼ばれるこの通りには、今も尚多くのアパレル店舗が立ち並び、ファッション好きな大人たちが集うストリートだと知られている。路地裏に静観に佇むメンズジュエリーショップ【Velvet Lounge】のディレクター雪岡正輝氏に話を伺った。
まず、ファッションに触れたきっかけを教えてください。
洋服自体は中学生の頃から興味がありましたが、本格的に好きになっていったのは実際に働き始めてからですね。学生時代に、某アパレルブランドで働いていまして、仕事として楽しさを覚えたその頃だったように思います。
ファッションからジュエリーに興味が移ったきっかけはありましたか?
僕がアパレルブランドで働いている当時は、ちょうどクロムハーツの人気が出てきた頃でした。ロレックスの時計にエルメスのジャンボチョーカーをつけてクロムハーツの指輪をするみたいなスタイルが、とても流行り始めてみんな同じようなスタイルをやりはじめて。
洋服は四季折々のシーズンで変化していくけれど、つけるアクセサリーは夏だろうが冬だろうが基本的に気に入ったものをずっと身につけていることに気づいて。シーズン毎にスタイルを変えていくことも素敵なことだけど、ずっとつけてもらえるもの、大切にしてもらえるものを作りたい、携わりたいという想いがあって、アクセサリーの専門店で働くようになりました。
アクセサリー専門店での経験を得て、どのタイミングでブランドを立ち上げられたんですか?
はじめ大きなデザインのものや、いわゆるシルバージュエリーって呼ばれるものを好んで身に着けていたんですが、時代の流れとともに、自分のスタイルもファッションも変わっていく中で、ある時、自分がつけたいと思えるアクセサリーがなくなってしまって。であれば、自分がつけたくて、かつそれを人に勧められるようなものを作りたいと思ったのが、16年前で2004年のことです。それがきっかけで現在の【Velvet Lounge(ヴェルヴェットラウンジ)】をスタートさせることになりました。
ヴェルヴェットラウンジのコンセプトを教えてください。
当時、音楽を僕はずっとやっていて、はじめはピアノだったんだけど、途中から仲間たちといわゆるクラブ遊びの中で、DJっていう遊びを見つけて。その頃に、ラウンジとか大人の人たちが集まる社交場にさらっとつけていけるような、ベルベットのような艶やかな質感のようなジュエリーを作りたいと思い、そこからヴェルヴェットラウンジという名前でスタートさせました。
デザインする上で大切にしていることはなんですか?
スタイルにこだわらないことです。スタイルの垣根がないような、カジュアルなファッションからフォーマルなファッションまで対応できるようなものを作るようにしているので、必然的にデザインする上での無駄を省いていって、シンプルなんだけどそこにしっかりとデザインの軸が詰まっているものをつくっていく。一番最初に派手なデザインを描いたとしても、そこから無駄な線を消していって、シンプルなものに昇華させていく。一つの型が完成するまでに、何度か書き直したり原型自体を作り直したりと、大きさやバランスを整え、デザインをしています。
一番思い出に残ってるデザインはありますか?
やっぱり2005年に発表して今も続けている“スネーク”。ネットもテレビも電話もない大昔、世界中の人々は蛇を神聖視していた時代があって。例えば、WHOの紋章は蛇のマークで、医療の再生の象徴として、イギリスのエリザベス女王がつけている蛇の結婚指輪だったら、永遠の愛の象徴として。東洋では白蛇、いわゆるお守りであったり、縁起物、お金が入ってくる象徴であったり。蛇には、神聖視されている良いイメージと、悪魔的な邪悪な部分を持つイメージがあるけれど、ヴェルヴェットラウンジが表現しているのは、良い意味での蛇というところで、結婚指輪もスネークをモチーフにしています。実はうちのロゴマークもスネークなんだよね。店には貼ってないんだけども(笑)
デザインのインスピレーションはどこから得ていますか?
自分が好きなことをしている時とか、人と話しているときって、とてもリラックスしている状態だから、左脳がシャットダウンされて、右脳が活発化していくので、その時にパッとひらめいたりとか。
そういう時はメモを取ったりするんですか?
んー、しない!(笑)だから結構忘れることも多い!(笑)
でも、それを繰り返していると常に頭の中で何かを考えている状態になるから、やっぱり常に考えているかもしれませんね。考えることが無いと閃きはないから。
元々デザインとかをやられていたんですか?
全く。だから16年前に出したものと今出したものって全然違いますね。当時はどういったものが作れて、作れないのかがわからなかったから、ファッションアクセサリー色が強かったと思います。そこから経験を積んで技法を習得し、学んでいく過程で着け心地に拘ったり石の止め方でオリジナリティを出していくようになりました。
石の止め方で思い出しましたが、ヴェルヴェットラウンジには、雪岡さんが生みの親と呼ばれる【スターダストパヴェセッティング】という技法があると思いますが詳しく聞かせてもらえますか?
特殊な石の止め方がありまして、石の形とか大きさとかそれが本当に星屑のように乱反射して色々な輝きがみれるというセッティングを【スターダストパヴェセッティング】と呼んでいて、10年前から今も続けています。生み出したというよりは、偶然に誕生したんですが、ある日、石の掴み取り販売を見かけて好奇心からやってみました。でも、カタチも大きさもバラバラで、買ったはいいけどこれどうしよう(笑)って思ったときに、当時うちはまだスカルをやってなかったんだけど、試しにスカルを粘土で作ってそこに押し当ててみたら、なんかめちゃくちゃカッコよくなって。それで製品化したのがきっかけ。そのスカルが大ヒットしてくれて、そこから、ベアブリックやミッキーをスターダストパヴェセッティングで表現して、そのすべての売上が非常によかったので、色々なものを表現するようになりましたね。
ヴェルヴェットラウンジは、どういう人につけてほしいですか?
ブランドのコンセプトにあるような自分のスタイルを持っている人で、それがたまたまうちのブランドがマッチングすればその人につけてもらいたいって思う。逆に、こんな人につけてほしいっていうのはおこがましい。その人達がヴェルヴェットラウンジを好きで、楽しんでもらえるのであれば、そういう人たちに一人でも多くつけてほしいなって思います。来られるお客さんも本当に様々だから。ファッション好きな人はもちろん、アーティストさんが着けられているのをみて、自分も同じのを着けてみたいと来てくださる方もいらっしゃいますし。
アーティストさんにも、愛用されているんですね。
格闘家、ミュージシャン、俳優さんまでいらっしゃいますね。本当にありがたいです。
普段の生活で大切にしていることはありますか?
やっぱり人との出会いを大切にしています。唯一の特技かもしれないんですが、単独行動が結構多くて、人が集まるような場所に一人で行って、そこにいる誰とでもすぐ打ち解けられます。自分が知らない世界の人達と話すと色々なアイデアにもつながるし、刺激的でそれがやっぱり楽しいです。そういった形で知り合った人からまた電話が来て「●●紹介したいんですけど」みたいな感じでどんどん輪が広がっていくみたいな。面白いですよね。
ブランドとしての今後の展望を教えてください。
今までは2〜3万円代のシルバーを素材としたものが主軸だったんですけど、これからは宝石(ダイヤモンド・サファイヤ・ルビー・エメラルド)を使ったような、ものとしての価値観もあれば、デザインとしての価値観もある、いわゆる“ジュエリー”を沢山展開していきたいと思っていて、この2年程作っています。数が少なくてもクオリティが高いものを発表していきたいなと思い取り組んでます。
最後に雪岡さんにとって35歳とは?
35歳って、僕がちょうど会社を独立させた時。多分一番面白い年齢じゃないかな。人の繋がりも広がったし、やらなきゃいけないこともたくさんあったから、あれもやりたいこれもやりたいで、とにかく毎日楽しかった。どんどん出会いも増えていったし、そこからビジネスにつながることも多かった35歳は、僕にとって一番楽しかったですね。
PROFILE
雪岡 正輝
Velvet Lounge Director
2004年、ディレクター雪岡正輝により現代のメンズジュエリーを提案するため【Velvet Lounge】を発足。古代より人の信仰や力の源として身に纏われ、進化してきたジュエリー。その古くから伝わるモチーフやフォルムを、削ぎ落とすという独自の観点により時代背景にあったテーマと融合させ、現代のジュエリーを提案する"ニュークラシック"をコンセプトとして新たなメンズジュエリーを展開しています。
Official Site : https://velvetlounge.jp/
Instagram : https://www.instagram.com/velvetlounge_official/
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